2010 年に奄美大島で、記録的な豪雨が降りました。奄美市名瀬では、24 時間雨量が 648 ㎜でした。奄美市住用町の3時間雨量は、100 年に 1 回起きると想定される雨量の何と 1.8倍で、いわば1000年に1回ともいえる豪雨です。


このため、奄美大島北部の⻯郷町で、大規模な崩壊が発⽣し、⼟⽯流化した⼟塊は約 600m流下し、集落の上流で停止しました。

 


図-1 崩壊地の全景 ⼟⽯流として約 600m流れ下る

 

崩壊発⽣の予知は難しい現状ですが、この崩壊では、崩壊面(すべり面)に沿って、スプーン状の一枚の粘⼟シートが形成されていたようです。写真では、崩壊後に所々赤色粘⼟が剥げた箇所が見られます。赤色粘⼟は、崩壊前に出来た断裂に地表付近の赤色粘⼟が流入したものと考えられます。


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図-2 崩壊面の赤色粘⼟

 


 

崩壊斜面は、クリープ岩体であったと考えられます。地表から推定 18m程度深部でも、岩盤の割れ目に多量の粘⼟が平行に流入している状況が見られます。


図-4 崩壊地の岩盤 粘⼟が流入したクリープ岩体

 


図-5 崩壊地中上部

 


図-6 対策後

 

この現場の崩壊を事前に予知するには、下記の調査があれば、予見できた可能性がある。ただし、現状の地質分野の技術水準では、結果は「危険な斜面」と判断できても、「どの程度危険か?」はファジーで、崩壊が差し迫っているか否かは、綿密な調査を追加しても難しい。もし、変動が確認されれば予見できるが、変動が確認されなければ、1年後か 100 年後か 1000 年後かは不明である。

① ボーリング調査でスプーン状に分布する流入粘⼟を確認する。
② 孔内傾斜計で変動状況を計測する。
③ その他の調査例
   ⅰ 高密度電気探査で流入粘⼟の分布を探る。
   ⅱ 地形を詳細に把握する(亜熱帯なので航空レーダーを利用した地形計測は難しい)。
   ⅲ 水質分析の変化を診る。

もし、崩⼟が到達する範囲の集落があったら、入念な調査が必要でしょう。ただし、現状ではその検出技術は、まだ発展途上の基礎段階でしょう。