メンテナンスを省略できる等付着力アンカー工法
NIPPON アンカーは、世界の常識を変えるアンカー工法です。これまでのアンカー(引張型・圧縮型)では定着部の端部で応力が過大となり(図-1)、グラウト材と地盤との付着がしだいに切れる逐次破壊が起きます(グランドアンカー設計・施工基準、同解説p158~159 ㈳地盤工学会)。本アンカーは、テンドンを定着部より奥に固定し(一次注入)、テンドンを緊張した状態で不動地盤と移動地盤を同時にグラウト(二次注入)するので、双方に定着部を造成するの事が出来ます。 定着部に集中応力が発生しないため、逐次破壊が起きません。
定着部とアンカー機構を図-2に示します。本アンカー機構を等付着型アンカーと呼ぶことにしました。
NIPPON アンカーは3つのタイプを予定しています。
- ・CF 型 炭素繊維ケーブルを利用するアンカーで頭部のテンドンクリップをナット固定。
- ・WE 型 高耐久性の被覆 PC 鋼線を利用し、テンドンと受圧板をくさび固定。
- ・PC 型 高耐久性の被覆 PC 鋼線を利用し、頭部のテンドンクリップをナット固定(研究中)。
CF 型と WE 型は、資材と設計施工ノウハウを提供可能です。
NIPPON アンカー CF 型のテンドンには、炭素繊維ケーブルを使用し頭部のテンドングリップは、用途に応じてステンレス製と亜鉛メッキ製を選択できます(図-3)。
図-4 は、岩盤地すべりに、本工法を適用する場合の参考図です。
各アンカーの許容引張り力 Ta は、定着部の引抜き抵抗力 T2pa と、移動土塊内の引抜き抵抗力 T1paと受圧板の支持力 Toa の合計と、アンカー材の強度 Tsa のうち最小値となります。
Ta=mini(Tsa, T1+Toa, T2pa)
CF 型の許容荷重
表-1 アンカー規格
断面形状 | 呼び名 | 直径 (㎜) |
設計周長 (mm) |
許容荷重 (kN) |
保証破断荷重 (kN/) |
平均弾性係数 (kN/㎟) |
1m当たりの重量 (g/m) |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1×7 7.9φ | 7.9 | 22.0 | 47.6 | 79.3 | 150 | 60 | |
1×7 10.8φ | 10.8 | 30.2 | 88.3 | 147.2 | 112 | ||
1×7 12.5φ | 12.5 | 34.6 | 115.5 | 192.5 | 146 | ||
1×7 15.2φ | 15.2 | 42.7 | 176.6 | 294.4 | 223 | ||
1×7 17.2φ | 17.2 | 48.7 | 231.0 | 385.0 | 292 | ||
1×7 19.3φ | 19.3 | 54.3 | 285.4 | 475.6 | 360 | ||
(複数本) | 15.2φ×2本 | - | 85.4 | 353.3 | 588.8 | 446 | |
15.2φ×3本 | - | 125.6 | 529.9 | 883.2 | 669 | ||
15.2φ×4本 | - | 141.3 | 706.6 | 1177.6 | 892 | ||
19.3φ×2本 | - | 108.6 | 570.7 | 951.2 | 720 | ||
19.3φ×3本 | - | 147.7 | 856.1 | 1426.8 | 1080 | ||
19.3φ×4本 | - | 165.1 | 1141.4 | 1902.4 | 1440 |
WE 型の許容荷重
多重防食および高付着性能を有した SUPRO/BW ストランドを使用
ストランド本数 (本) |
断面積 (㎟) |
降伏荷重 (kN) |
設計荷重 (kN) |
標準削孔径 (mm) |
見かけの周⾧ (mm) |
---|---|---|---|---|---|
1 | 98.7 | 156 | 109 | φ90 | 42.4 |
2 | 197.4 | 312 | 219 | φ90 | 84.8 |
3 | 296.1 | 468 | 329 | φ90 | 127.2 |
4 | 394.8 | 624 | 439 | φ90 | 153.7 |
5 | 493.6 | 780 | 549 | φ90 | 157.2 |
6 | 592.3 | 936 | 658 | φ90 | 160.7 |
7 | 691 | 1092 | 768 | φ115 | 164.2 |
①テンドンの組み立て(CF 型の例)
アンカーテンドンには、スペーサーを 2.0m間隔で取り付けグラウト材滲出タイプのパッカーを使用します。トップリング岩盤や地すべり岩塊などでは亀裂が多いため、グラウトの漏逸防止のために固定部と定着部の2本パッカーを使用します。地盤状況と施工法によっては、パッカーは不要です。頭部のテンドングリップは、基本的にはステンレス製です。
②削孔 削孔は、一般的なアンカー工と同じ機材を使用します。
③固定部造成 図-6 に赤色で示した部分にテンドンを固定する固定部を設けます。ケーシング加圧出来る場合は不要ですが、必要に応じ固定区間にパッカーを取り付け、グラウト(一次注入)します。 グラウト材には、水セメント比 35~40%の特殊早強セメントを使用します。35%の特殊早強セメント注入後 10 時間で 30N 以上、16 時間で 24N 以上の強度が得られます。このため、夕方までに固定部を造成すると翌朝からテンドンを緊張し二次注入が可能になります。
④試験 固定部が完成した時点で、テンドンを引っ張り適性試験や確認試験を実施します。
⑤グラウト
グラウト材には、水セメント比が 35%ないし 40%の早強セメントに、マスターロック FLC 400 を 1%投入し、早期に24(N/㎟)以上の強度を得ます。10~16 時間でテンドンを緊張可能となるので、夕方固定部をグラウトすると翌朝にはテンドンを緊張した状態で二次注入が可能です。
二次注入も同じグラウト材で行います。工程を急ぐ場合は、2 時間で 20(N/㎟)以上の強度が得られる超早硬セメント(フィルコン S ス-パー)を用いることも可能です。
二次グラウトの際に重要な点は、テンドンの緊張荷重を注入材が硬化するまで一定にすることです。荷重が低下する現場では、自動的に一定荷重を保持できる油圧ジャッキを用います。
名称 | 硬化時間(15~17℃) と圧縮強度 |
水 セメント重量比 |
混和剤 FLC400 |
---|---|---|---|
早強 35%ミルク | 10 時間後 30(N/㎟) | 35% | 1%(容量) |
早強 40%ミルク | 16 時間後 24(N/㎟) | 40% | 1%(容量) |