森林斜面に適する長寿命補強土植生型

森林斜面に長寿命補強土植生型は適しています。金網が軽量で取り扱い易いため、現場の施工性は良好です。使用する資材は、「長寿命補強土植生型」の資材に金網連結用のコイルを追加します。

施工後(この現場は土壌が浸食されやすいので侵食防止フィルターが利用されています。)

施工後(全ての部材が酸・アルカリ・塩分・紫外線に高い耐久性があります。

日本の森林にマッチする理由

森林土壌は酸性土壌

日本全国の約 27,000 箇所を調査した結果で、日本の森林土壌はほとんど pH6 以下(pH4~5 が多い)としています。
出所:国立研究開発法人森林研究・整備機構 森林総合研究所(森貞和仁 2003 日本の森林土壌における土壌酸性の分布と特徴 ペドロジスト 第47巻 第2号)

メッキは酸性とアルカリ性環境で溶解

日本溶融亜鉛鍍金協会は、pH6以下の酸性とpH12以上の高アルカリ性の水中では亜鉛鍍金は急激に溶解するとしています。したがって、亜鉛鍍金製品の部材は森林土壌と接触すると溶解が促進されます。
(メッキの耐久性向上のために亜鉛+アルミニウム合金のメッキなども開発され、同じメッキ量なら耐久性が2倍程度になります。一方、ロープなど柔軟性が必要な資材では補強材の半分程度のメッキ量となるため、耐久性の課題は残ります。)

土壌と接触したメッキの耐久性

pHとの関係以外に、土壌中のメッキの耐久性について、亜鉛めっき構造物研究会では「溶融亜鉛めっきの耐食性 p13~15」は、通常24~25年程度としています。

表13、日本における 土壌のの腐食速度

土地の区分 腐食速度(g/㎡/年)
水平埋没 垂直埋没 平  均
HC
LIC
SCL
CL
SICL
LS
L
SL
28.0
16.1
28.9
17.3
21.7
24.6
17.7
24.4
25.4
16.5
37.0
16.1
22.2
25.3
26.6
25.0
26.7
16.3
33.0
16.7
22.0
24.0
22.2
24.7

5年間の調査結果により、今後も等速で腐食していくとし、亜鉛付着量600g/㎡でその90%が消耗するまでの期間をめっき皮膜の寿命として耐用年数を計算すれば、最も短い場合で16.4年、長い場合で33年となり、通常24年〜25年耐用が期待できます。また外国の例として、米国における土質に夜高純度亜鉛の腐食量を表14に、また土壌の電気抵抗と腐食の関係を表15に示します。

海岸地域のメッキの耐久性

日本溶融亜鉛鍍金協会は海岸地帯のメッキの耐久性をJIS規格で最も厚いメッキ量550(g/㎡)でも25年程度としています。

結局森林土壌は酸性なのでメッキ品に替わる高耐久性の資材が必要になります。海岸地帯では更に厳しい環境になります。

施工方法

基本的に、長寿命補強土植生型と同じです。林冠を形成する樹木などを残して、雑木を伐採する必要があります。金網の連結には専用コイルを用います。

補強材の配置

最大ピッチ 1.5mで補強材を配置します。樹木のために補強材ピッチが広くなりすぎる箇所には追加の補強材を打設します。

削孔

写真では足場を使用しない工法(SD 工法や無足場工法)で削孔されています。

金網の固定

力を受けてても金網の皮膜が傷つかないように網固定ブロックを使用します。

樹木箇所

幹の部分では金網敷設の際に、金網の開口部を設けます。

完成

樹幹の周りに補強材で固定された金網をほぼ全面に敷設できます。

削孔中

網敷設中(この現場では侵食防止マット使用)

金網は木の周りにも敷設可能