晴天でも繰り返し起きる土石流

2010 年7 月4 日から8 日にかけて,鹿児島県南大隅町の船石川で土石流が発生し、50 世帯91 人に避難勧告が出され、1 カ月以上の避難となりました。降雨が無い日にも土石流が繰り返し発生している点です。


 

 

7月6 日の崩壊部の状況です。手前の傾いた岩柱は、垂直の岩体が転倒崩壊(トップリング崩壊)しようとしているところです。次の日の朝までには、この岩柱は崩壊しました。岩石そのものは、新鮮で硬質なのに、傾いた岩柱の表面には、土や粘土がこびりついています。相当期間岩盤の節理が開いており、節理面にそれらが付着したものと考えられます。


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7月7 日のテレビ画像では、パイピング孔と湧水の流路(⿊い穴)が映っています。この後も、繰り返し崖は崩れていきます。
8月に撮影した写真には、パイピング孔が写っています。大きなパイピング孔は、崩壊物で埋まってこの時点では見えません。

 


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崩壊が収束した後の岩壁です。岩石部分だけで高さ30mあります。

 

 

 


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2010 年の土石流発生理由と
土石流が2005 年〜2010 年にかけて発生した理由。

1 崩壊が台地に食い込む

 

2 崩壊モデル

地質
硬質な溶結凝灰岩の下に、軟質な火砕流の非溶結部が分布しています。火砕流の非溶結部は、シラスと呼ばれることもありますが、水の侵食を非常に受けやすい特徴があります。溶結凝灰岩は、この付近では直径3〜4mの六角柱です。鉛筆を束にしたような岩柱が台地の上面を覆っています。
地下水位
雨が降った後、溶結凝灰岩の下部に僅かに形成されますが、梅雨時期など多量の降雨があると10m以上も地下水位が上昇します。
水が貯留される岩の割れ目が限られているので、降雨量の何倍もの地下水位上昇になります。
崖下の軟質層の侵食
① 崖下の軟質層に、上部の地下水が多量供給されて、パイピングや小規模崩壊が発生します。
② このために、崖下斜面の一部はオーバーハングします。また、崩壊が多発することなどで柱状岩体の基礎部分である非溶結部の強度が低下し、岩柱は崖側に傾き始めます。
③ 非溶結部の侵食は常に進むので、上記②の現象は進行し、崖の溶結凝灰岩が崩落します。地下水の供給があれば、雨が降ろうが晴れていようが関係ありません。
繰り返す崩壊
地下水が高い位置にある以上、上記の①から③が繰り返されます。また、今回5 年前と同じ個所に土石流が起きた原因は、最後に記載しています。地下水の流出経路の短絡です。

 

 

 

 


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